遺伝子頻度の計算問題に苦手意識がある人は多いのではないでしょうか?
本記事では、遺伝子頻度の基礎から実際の計算方法まで、初学者にもわかりやすく解説します。
特に「生物基礎」「生物」の入試問題でよく出題される、環境要因による遺伝子頻度の変化について、具体例を用いて詳しく説明していきます。
遺伝子頻度とは?初心者でもわかる基礎知識
遺伝子頻度は生物の進化を理解する上で最も重要な概念の一つです。
この章では、初学者でも理解できるように、基礎から丁寧に説明していきます。
共通テストでも頻出の分野なので、しっかり理解しておきましょう。
遺伝子頻度の定義
遺伝子頻度とは、生物集団の中である対立遺伝子が存在する割合のことです。
例えば、ある遺伝子座に対立遺伝子A、aがある場合、それぞれの頻度をp、qと表し、p + q = 1となります。
この時、集団内には以下の3つの遺伝子型が存在します。
- AA型(頻度:p²)
- Aa型(頻度:2pq)
- aa型(頻度:q²)
なぜ遺伝子頻度を学ぶ必要があるのか
遺伝子頻度は、生物集団の進化や遺伝的変化を理解する上で重要な概念です。
以下のような場面で特に重要となります。
進化のメカニズムの理解
- 自然選択による遺伝子頻度の変化
- 集団の適応度の変化
- 遺伝的浮動の影響
品種改良や育種での応用
- 望ましい形質の選抜
- 遺伝的多様性の維持
- 交配計画の立案
保全生物学での活用
- 絶滅危惧種の遺伝的多様性評価
- 保全戦略の立案
- 近交弱勢の予測
ハーディ・ワインベルグの法則の基礎
この法則は、理想的な条件下では世代を重ねても遺伝子頻度が変化しないことを示します。
【必要な条件】
- 集団が十分に大きい
- 無作為な交配が行われる
- 突然変異が起きない
- 自然選択が働かない
- 移入・移出がない
【法則の重要性】
- 実際の集団の遺伝的変化を理解する基準となる
- 集団の遺伝的構造を予測するモデルとなる
- 自然選択の影響を評価する際の基準となる
実践!遺伝子頻度の計算問題
入試問題で最もよく出題されるのが、環境要因による遺伝子頻度の変化を問う問題です。
ここでは、実際の入試問題に近い形式の例題を解きながら、計算方法をマスターしていきましょう。
例題:蝶の翅色の遺伝
以下の問題を通じて、具体的な計算方法を学んでいきましょう。
【問題】
アカハネチョウという蝶には、翅の色に赤色型と白色型の2つの表現型があり、この色の違いは1つの遺伝子座の対立遺伝子によって決定される。
赤色型にする対立遺伝子をR、白色型にする対立遺伝子をrとする。
赤色型は白色型に対して完全優性であり、無作為に交配が行われている。
ある地域の個体群で、蛍光灯に誘引される性質が異なることが判明し、夜間の蛍光灯による誘引で死亡する確率は、白色型の方が赤色型よりも40%高いことが分かった。
初期集団において、対立遺伝子Rの頻度をp、対立遺伝子rの頻度をqとする(ただし、p + q = 1)。
設問と条件の整理
問1. 集団の次世代における赤色型と白色型の頻度を、pとqを用いた式で表せ。
問2. この式が基づいている、集団遺伝学の基本法則の名称を答えよ。
問3. 以下の空欄に適切な数値を入れよ。
ある世代で2000匹の成虫を調べたところ、白色型が320匹観察された。この時の対立遺伝子rの頻度qは( ① )である。蛍光灯による死亡率が赤色型で50%、白色型で90%である場合、白色型は( ② )匹に減少すると予想される。この時点での生存個体全体における対立遺伝子rの頻度q’は( ③ )となる。(③は小数第3位を四捨五入すること)
詳しい解説|計算の手順を理解しよう
遺伝子頻度の計算で最も重要なのは、手順を正確に理解することです。
多くの受験生が途中で計算を間違えてしまうのは、手順の理解が不十分なためです。
ここでは、計算の各ステップを詳しく解説していきます。
Step1:初期の遺伝子頻度を求める
- まず、観察された表現型から遺伝子頻度を計算します。
白色型(劣性ホモ)の頻度 q² = 320/2000 = 0.16
したがって、 q = √0.16 = 0.4
p = 1 – q = 0.6
- 初期集団の各遺伝子型の個体数を計算します。
- RR型:2000 × p² = 2000 × 0.36 = 720匹
- Rr型:2000 × 2pq = 2000 × 0.48 = 960匹
- rr型:2000 × q² = 2000 × 0.16 = 320匹
Step2:生存率の影響を計算する
生存率の違いを考慮します。
- 赤色型(RR型、Rr型):50%生存
- 白色型(rr型):10%生存
生存個体数の計算
- RR型:720 × 0.5 = 360匹
- Rr型:960 × 0.5 = 480匹
- rr型:320 × 0.1 = 32匹
Step3:新しい遺伝子頻度を導き出す
生存個体における対立遺伝子の数を計算
- R遺伝子:(360 × 2) + (480 × 1) = 1200個
- r遺伝子:(32 × 2) + (480 × 1) = 544個
- 全遺伝子数:1744個
新しい遺伝子頻度の計算
q’ = 544/1744 = 0.25(小数第3位四捨五入)
よくある間違いと対策
計算の失敗例と解決方法
ヘテロ接合体の数え間違い
- 【失敗例】Rr型からの遺伝子を2倍に数えてしまう
- 【対策】ヘテロ接合体からは各対立遺伝子が1個ずつしか来ないことを意識する
分母の計算ミス
- 【失敗例】個体数をそのまま分母にする
- 【対策】遺伝子数は個体数の2倍になることを覚える
公式の使い方のコツ
基本の公式を確実に覚える
- p + q = 1
- 優性形質の頻度 = p² + 2pq
- 劣性形質の頻度 = q²
計算の順序を意識する
- まず観察された頻度から初期の遺伝子頻度を求める
- 次に環境要因の影響を計算
- 最後に新しい遺伝子頻度を求める
遺伝子頻度の問題で高得点を取るコツ
遺伝子頻度の問題は、生物の入試問題の中でも配点が高い傾向にあります。
しかし、多くの受験生が計算ミスや問題文の読み違いで失点してしまいます。
実は、遺伝子頻度の問題は、解き方のパターンさえ押さえれば、十分に満点を狙える問題なのです。
ここでは、実際の入試で高得点を取るための具体的な方法を解説していきます。
問題文の読み方のポイント
重要な情報を整理する
- 優性・劣性の関係
- 表現型と遺伝子型の対応
- 環境要因の影響
数値情報を明確にする
- 初期の個体数
- 生存率の違い
- 求める世代
答案の書き方のテクニック
計算過程を明確に示す
- 使用する公式を明記
- 途中計算を省略しない
- 単位や項目を明記
結果の表し方
- 指定された桁数で四捨五入
- 単位を忘れない
- 答えを枠で囲むなど、わかりやすく表示
まとめ:遺伝子頻度の計算問題を確実に解くために
✓ 基本事項の確認
- 遺伝子頻度は集団内の対立遺伝子の割合
- ハーディ・ワインベルグの法則が基本
- 環境要因で頻度が変化する
✓ 計算の手順
- 初期の遺伝子頻度を求める
- 環境要因の影響を計算
- 新しい遺伝子頻度を導出
✓ 注意すべきポイント
- ヘテロ接合体の遺伝子数の数え方
- 分母は全遺伝子数(個体数×2)
- 指定された桁数での四捨五入
【入試本番での注意点】
- 時間配分を意識する(計算問題は時間がかかりやすい)
- 途中式もしっかり書く(部分点が重要)
- 答案は明確に記述(採点者が理解しやすいように)
【関連記事】【完全解説】メンデルの法則の計算問題
【関連記事】生物基礎|確率の計算問題の解き方
【関連記事】共通テスト|生物の計算問題まとめ