「宇宙一と漆原はどっちがいい?」と、物理を選択する生徒から毎年質問されます。
そこで今回は、宇宙一と漆原はどっちがいいのか、これまで生徒たちが実際に使って感じたリアルな口コミも交えて、宇宙一と漆原の違いを徹底比較しました。
まず、宇宙一と漆原の主な違いをピックアップしたものがこちらです。
宇宙一わかりやすい高校物理(宇宙一) | 大学入試 漆原晃の物理基礎・物理が面白いほどわかる本(漆原) | |
構成内容 | 見開き左ページが説明文 右ページがイラスト説明 | 講義系の参考書 マンツーマン指導のような感覚で進められる |
別冊の問題集の有無 | ◎ 別冊の問題集がつく | × 別冊の問題集はなし |
著者の関連問題集の有無 | × 著者の関連問題集の出版はなし | ◎ 著者の関連問題集が複数出版されている |
冊数 | 2冊構成 力学・波動編(508ページ) 電磁気・熱・原子編(600ページ) 合計1108ページ | 3冊構成 力学・熱力学編(320ページ) 電磁気編(304ページ) 波動・原子編(304ページ) 合計928ページ |
著者 | 鯉沼 拓(執筆当時:東京大学学生) 監修 為近和彦(代々木ゼミナール物理科講師) | 漆原晃(代々木ゼミナール物理科講師) |
発売日 | 旧課程版:2012/7/31 新課程版:2023/2/24 | 旧課程版:2014/1/21 新課程版:2023/5/26 |
出版社 | 学研 | KADOKAWA/中経出版 |
価格 | 1冊1760円(税込) 2冊合計3520円(税込) | 1冊1540円(税込) 3冊合計4620円(税込) |
もしどっちかを選ぶとなったら、文系よりで、物理のとっかかりとして使うなら宇宙一を、理系よりで、本格的に物理を学習したい、物理を受験に使うのなら漆原を選んでおけば間違いないです。
※宇宙一は『宇宙一わかりやすい高校物理』の本の名前から、漆原は『大学入試 漆原晃の物理基礎・物理が面白いほどわかる本』のそれぞれ本のタイトルから一部をとって呼ばれています。
この記事では、宇宙一は『宇宙一わかりやすい高校物理』を、漆原は『大学入試 漆原晃の物理基礎・物理が面白いほどわかる本』を指しています。
では、より詳しく説明していきます。
宇宙一と漆原はどっち?物理の参考書の違いを徹底比較してみた
ここからは実体験を織り交ぜながら、宇宙一と漆原の違いをさらに詳しく説明していきます。
比較①:物理現象をイメージできないなら、漆原よりも宇宙一
物理現象をまったくイメージできない、とにかく物理が苦手、よくわからないという人は宇宙一の方が向いています。
宇宙一は、物理現象を文の説明だけでなく、ほぼすべて、イラストでイメージをつかめるように工夫されています。
漆原の方は、キャラクターとやり取りしながら、読み進めていくタイプの講義系の参考書で、まるでマンツーマン指導のような感覚で進められます。
行間も広めで、イラストも多いので、活字が苦手な生徒でも読み進めていくことができます。
一方で、宇宙一は全ページにわたって、見開き左ページが文による説明で、右ページがイラストを使った説明になっています。
物理が苦手という人の多くは物理現象がイメージできないことに原因がある場合がほとんどなので、イラストが豊富な宇宙一を選ぶといいでしょう。
比較②:参考書に添付された別冊問題集が必要なら、漆原よりも宇宙一
宇宙一と漆原は、問題演習が別冊になっているか、説明文中にあるかが違います。
宇宙一の方は、参考書の説明が理解できたかどうかを確認するための、薄めの別冊の問題集がついています。
一方、漆原には別冊の問題集こそ添付されていませんが、参考書の説明文の随所に問題演習があります。
個人的には、宇宙一に添付されている問題集の演習量では大学受験にはとても太刀打ちできないので、別冊の問題集がついているか、ついていないかは、あまり重要視しなくてはいいと思います。
それでも、別冊の問題集があったほうがいいという方は、宇宙一がいいでしょう。
比較③:参考書の内容で演習できる問題集が必要なら、宇宙一より漆原
宇宙一は、宇宙一で学習したの内容を確認できるような、関連問題集が1冊もありません。
一方で、漆原の方は、漆原で学習したの内容を使って、演習できる問題集が何冊かあります。
特に、過去私が教えた漆原愛用の理系の物理選択者に好評だった問題集が次の2冊です。
【漆原派におすすめ問題集】漆原の物理(物理基礎・物理)明快解法講座 四訂版 (大学受験Doシリーズ)
【漆原派におすすめ問題集】漆原の物理(物理基礎・物理)最強の99題 四訂版 (大学受験Doシリーズ)
余談ですが、芝浦工業大学の一般受験では物理が難しい言われています。
「漆原の物理(物理基礎・物理)最強の99題 四訂版 (大学受験Doシリーズ) 」で演習をした私の生徒たちは全員無事に合格しています。
つまり、参考書を利用しながら、漆原の演習問題集をしたい、受験にのぞみたいという場合は、漆原の方がいいですよ。
比較④:冊数が少ない方がいいのなら、漆原よりも宇宙一
宇宙一の方が2冊に対し、漆原は3冊と、それぞれ分野ごとに分かれています。
宇宙一の2冊それぞれのページ数は次の通り。
宇宙一は2冊合計で、1108ページになります。
一方、漆原の3冊それぞれのページ数は次の通り。
漆原は3冊合計で、928ページになります。
実際に手に取ってみると、宇宙一の1冊の方が厚いので、重い印象です。
持ち運びたいとか、まだ薄い参考書の方がいいというのであれば、漆原の方を選ぶといいでしょう。
比較⑤:著者の経験値や専門性の高さで選ぶなら、宇宙一よりも漆原
宇宙一の方は、大学受験生に極めて近い世代であった、埼玉県立川越高校から現役で東京大学理科Ⅰ類に合格した鯉沼拓さんが東大生時代に執筆しています。
そして、代々木ゼミナールの物理講師としても名高いベテランの為近和彦先生が監修しています。
一方、漆原の方は、代々木ゼミナールの物理講師として人気の漆原晃先生が執筆しています。
大学受験生に極めて近い世代の目線で書かれた参考書を選ぶのか、物理講師としての経験値や受験業界に長年いる専門的な視点から書かれた参考書を選ぶのかは好みもわかれるでしょう。
やはり参考書だから、著者の経験値や専門性の高さで選ぶというのであれば、漆原になるでしょう。
比較⑥:新課程版はどちらでも対応済み
当初、宇宙一と漆原の違いは、新課程版の発行がされているか、されていないかもありました。
2023年7月時点で、宇宙一と漆原、どちらにも、旧課程版と新課程版の2種類があります。
この違いは、2022年度以降に高校に入学された方が新課程版の対象で、2021年度以前に高校に入学された方は旧課程版の対象となります。
そもそも、物理は、出版日の新しい参考書の方がいいということはありません。
というのも、物理という科目は解法がほぼ確立しているので、今更目新しいものはないのです。
どうしても新課程版の参考書が欲しいというのであれば、宇宙一と漆原の新課程版対応済みを選ぶといいでしょう。
比較⑦:購入金額は買う冊数によって変わってくる
冊数の違いのところで触れたように、宇宙一は2冊、漆原は3冊、それぞれあります。
宇宙一の2冊は次の通り。
漆原の3冊は次の通り。
購入金額は下のように買う冊数によって、宇宙一がいいのか、漆原がいいのかは分かれます。
宇宙一わかりやすい高校物理(宇宙一) | 大学入試 漆原晃の物理基礎・物理が面白いほどわかる本(漆原) | |
1冊の価格 | 1760円(税込) | 1540円(税込) |
2冊の価格 | 3520円(税込) | 3080円(税込) |
3冊の価格 | / | 4620円(税込) |
全分野、つまり全冊購入する場合は、宇宙一の方がお得です。
宇宙一派の口コミ体験談
ここからは、宇宙一が漆原より好きという口コミ体験談を、ネットの口コミも含めて紹介していきます。
漆原のいまいちなところ
社会人で独学で勉強し始めた者ですが、チェック問題が説明もなく当たり前のように応用を使ってきてしかも説明無し。図解などは情報を書き並べただけでわかりやすくもないです。結局別の教材や映像授業等を用いてようやく理解できるレベルなので買う必要も無いと思います。
引用元Amazon
理数系参考書によくある「分かり易い!」だが、苦手な人間にとって、まったく分り辛い。そもそも数字やローマ字が羅列されまくっていて理解できない。最初の加速度においても日本語で説明していれば分かるところを、いきなり数式が出てきて理解しずらくなっている。理数系科目だから当たり前だが、数式に拒絶反応を起こす人間にとっては、どこが分かり易いんだ?と思う。分かり易いをいうのなら、もっとかみ砕いて説明して欲しいね。所詮、できる人間レベルでの分かり易いといことだな。これで、苦手を克服はできないね。
引用元Amazon
漆原より宇宙一の方がいいという人の特徴は、上の口コミのように、物理初心者とか、物理が苦手で、イメージができないので式化がキツイといったもの。
私の経験からみても、文系よりのタイプの人で、式の説明よりも文の説明の方が理解しやすい、イラストや図でイメージをつかみたいという人は同じような評価をしています。
また大学受験に物理は使わないが、授業で必須となっていて、定期試験の評定対策だけに使うといった生徒も宇宙一を使う傾向が高いです。
宇宙一がいいところ
物理訳わからなさすぎたから宇宙一わかりやすい物理買って早速やってるけど分かりやす…
— ミ゛ (@teihen_dassyutu) March 27, 2023
公式を丸暗記させないという方針に惚れ込みました。
実の所教科書に書いてあるものがですます調になったような内容だったりします。
しかしながら教科書では式変形の過程が少し薄いです。
そのため式変形の過程を学ぶことができます。
問題もありきたりな問題ですが、よくある参考書では式もう知ってるよねと飛ばすような内容も解説してくれます。
この本をお勧めする方は数学の苦手な方におすすめしたいです。
逆におすすめしないのが、数学の得意な方です。前述の通り教科書の内容を平易な文体にしたような感じですのでこれだと簡単すぎじゃないかと思います。
引用元Amazon
学校の教科書では分からないことがあり、購入しました。右のページにイラストでの説明があり非常に分かりやすいです。
引用元Amazon
宇宙一がいいという人たちは、説明が丁寧、式変形の説明が親切といった評価が高く、数学に難ありという傾向が高いです。
私の経験からしても、学校で使用するリードαの解答にある式変形が理解できないとか、そもそも式の意味が理解できないといった生徒が宇宙一を好む傾向にあります。
次に、宇宙一よりも漆原の方が好きという口コミ体験談を紹介していきます。
漆原派の口コミ体験談
次は、漆原が宇宙一より好きという口コミ体験談を、ネットの口コミも含めて紹介していきます。
宇宙一がいまいちなところ
本屋で立ち読みしましたが、正直心理的にダメです。高校時代に物理を選考していた自分には、なんだかなぁの印象で、イラストも嫌いで気分悪くなりました(笑)
初心者向には適してますが(笑)
引用元Amazon
物理が苦手でこの本(力学含む)を使っていて、何周もしました。
本にある問題は全部解けるようになりましたが、いざ演習すると全然解けるようになっていなかったので、過信はしない方がいいと思います。
あくまで取っ掛りに過ぎないです。
引用元Amazon
説明がくどいとか、物足りないとか、イラストがムリとか…さまざまな要因があるようですが、理系より、数学が得意な生徒さんの多くは、宇宙一はダメという生徒が多いです。
また、比較②③のとこでも触れましたが、別冊の薄い問題集が解けたことで、物理がわかったつもりになっても、いざ本格的な演習になると解けない…といった生徒もいました。
漆原がいいところ
🟧 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本
— かむかむ🐥 (@KamKam_Otter) January 9, 2023
~1 16分
面白いほどわかるシリーズ、同じことを説明していても分かりやすくて良いかもですね。表紙が微妙で紙の書籍版は買いづらいですが。何でこんな表紙なのか😂#勉強垢 pic.twitter.com/4FQPlIg5pH
漆原晃の高校物理が面白いほどわかる本でぜろから全統記述物理半分まで上げた
— 封印されし禁断のアーニャ (@cosC6H12O6) November 19, 2022
非常に読みやすいです。物理基礎、物理と分かれています。公式にしてもただ暗記するだけではなく、公式に至るまでのイメージや考え方などが記載されており非常に覚えやすく長期記憶を可能にしています。またその公式がどのような問題で使えるのかなども載っているため点数を取りに行く上ではかなり使えます。単元が細かく分かれていてスムーズに読めるため飽きないです。問題のセレクトも大学入試で出題されそうなものばかりで非常にありがたいです。時々挟まれている冗談が面白いです。自分もこの本を読んで点数が40点近く上がりました笑
ぜひ読んでみてください!おすすめです!
引用元Amazon
物理は数学と違って、使うべき公式がある程度決まっています。ですが、物理現象を理解せずにただ公式を丸暗記しても物理ができるようにはなりません。
とくに、理系の生徒に見られる特徴で、意味も理解できていないのに、公式の暗記は無理…という人には漆原は合う傾向にあります。物理の基本、性質が理解しやすいです。
宇宙一がおすすめな人
ネット上の口コミや私の経験からみて、宇宙一の方がおすすめな人は次のような人です。
- 物理初心者
- 物理が苦手、まったくわからない
- 物理現象がイメージできない
- 文系なのに物理をやらなくてはならない
- 定期試験だけ、とりあえず評定対策だけ
- 数学が苦手
- イラストが必要、文だけではまったく理解できない
宇宙一は、物理初心者や、物理基礎から怪しい、物理の教科書が理解できない、といった物理がとにかく苦手という人に特に好まれます。
また、大学受験に物理を使わないけれども、物理の授業が必須となっている生徒たちは、定期試験の物理にてこずる傾向がありますが捨てることができないのです。
というのも、推薦入試を狙う場合であれば、物理の評定が全体評定の平均値に影響してくるため、物理でも一定点数をとらなければなりません。
物理の本質はどっちでもいい、とりあえず上っ面の理解でいい、といった生徒さんにも人気があります。
私の経験から言えるのは、物理初心者であっても、理系なら宇宙一では物足りないと感じる生徒がほとんどです。
漆原がおすすめな人
一方で、ネット上の口コミや私の経験からみて、漆原の方がおすすめな人は次のような人です。
- 物理でわからないところがある
- 物理の本質、性質を理解したい
- 併用して使える問題集がほしい
- 大学入試で物理を選択する
- ガチ理系の生徒
- 数学の式変形は問題ない
- 数学が全般的に得意
漆原に関しては、理系の生徒のほぼ全員が漆原を選ぶといっても過言ではないくらいに、理系で物理選択の生徒に好まれます。
なかには、宇宙一の中身を見ずに買ってしまい、宇宙一では物足りないとか、何かが足りないとか、説明がくどいとかいう理由で買い替える生徒もたくさんいます。
漆原に買い替えてよく聞くのは、すごくわかりやすい、回りくどくなくて説明がちょうどいいという評価です。
私の経験から言えるのは、物理初心者であっても、理系で物理を使う生徒なら漆原で始めても問題ないということです。
宇宙一と漆原はどっち?物理の参考書の違い・比較のまとめ
なかでも大きく違う点は次の2つになります。
宇宙一の良いところ
- 物理現象がイメージできない、物理が苦手な人には非常にわかりやすい
漆原の良いところ
- 物理の本質が理解できるので、入試で物理を得点源にできる可能性が高くなる
長々と書いてきましたが、宇宙一と漆原、どっちを買おうかやっぱり迷うなら、文系よりなのか、理系よりなのか、物理を大学受験科目として使うのか、どこまで物理を理解したいのかによって選ぶといいでしょう。
私の経験から言えることは、宇宙一はあくまでも物理のとっかかりとして使うには悪くないものの、漆原は物理を本質からしっかり学びたい生徒が使う傾向が非常に高いということです。
もしどっちかを選ぶとなったら、文系よりとか、物理のとっかかりとして使うなら宇宙一を、理系より、本格的に物理を学習したい、物理を受験に使うのなら漆原を選んでおけば間違いないです。