この記事では、国立および公立大学の二次試験や私立大学の入学試験において、学問分野別の小論文の過去の傾向と今後の予測について解説します。
また、過去5年間（2019年から2023年まで）の出題データをもとに、各学部でどのようなテーマが取り上げられる可能性があるかを予想しています。
法学系の分野
おさえておくべき基本テーマ
法学系統では「民主主義」や「法の本質」、「法と正義」、「法と道徳」、「公共性」などが取り上げられます。
新しいテーマとしては「AI時代の法律問題」、「女性の政治参加拡大」、「社会的格差解消の法律」などが考えられます。
過去5年間のテーマ分析
法学部の小論文テーマは大きく分けて、次の3つになります。
- 法学専門テーマ
- 学問・文化関連テーマ
- 時事問題テーマ
法学部の小論文テーマでは、特に１の「法学専門テーマ」が多く、「法の意義」「法と道徳」「法と正義」「民主主義」「憲法」「公共の利益」「言論の自由」などが中心的な話題として挙げられています。
2024年の出題が予測されるテーマ
「法と道徳」「民主主義」「憲法」「法の理念」に関する問題は引き続き出題されると見られます。
加えて、「AIと法律」「女性の政治参加に関するクオータ制」「社会的格差を克服する法律および政策」などが注目されるテーマになるでしょう。
経済・経営・商学系の分野
おさえておくべき基本テーマ
経済・経営・商学部の試験では、「グローバリゼーション」「日本型資本主義」「社会的な格差」「貨幣の理論」が一貫して重視されています。
最新の話題として、「環太平洋パートナーシップ協定（TPP11）」や「経済連携協定（EPA）」「最低賃金の上昇」「電子商取引の増加」が取り上げられています。
過去5年間のテーマ分析
経済・経営・商学部の小論文テーマは、次の3つになります。
- 経済専門テーマ
- 社会学的テーマ
- 時事問題
特に経済専門分野では「経済的不平等の扱い」「グローバリズムの進行」「日本企業の成長政策」が中心になっています。
2024年の出題が予測されるテーマ
「資本主義の変遷」「グローバリゼーションの展望」「社会的不平等の深掘り」など、従来のテーマが引き続き出題されると予想されます。
さらに、「疾病流行の経済への影響」「新たな経済連携協定」「AIの経済統合」などの新しい問題も取り上げられる可能性があります。
社会・社会福祉系の分野
おさえておくべき基本テーマ
社会・社会福祉系の小論文テーマとしては、「少子高齢化問題」「ボランティア活動」「児童虐待対策」「家庭構造の変化」「出生率低下」「持続可能な発展」「人口減少の影響」「社会的不平等」「貧困層の課題」などが頻繁に取り上げられます。
過去5年間のテーマ分析
社会学部と社会福祉学部の出題は、次の2大カテゴリーにわかれています。
- 社会学的アプローチ
- 社会福祉的観点
2024年の出題が予測されるテーマ
社会・社会福祉系の小論文テーマとしては、今後も「ボランティア活動の重要性」「個人と社会との関係性」「高齢化問題」「少子化の対応策」「社会の格差問題」「障害者のサポート」「社会福祉課題」などが定期的に問われるでしょう。
新しいテーマとしては、「ヤングケアラーの現状」「子どもの貧困」「健康の社会格差」「生活の質（QOL）の向上」が注目されると予測されます。
国際・外国語系の分野
おさえておくべき基本テーマ
国際関係と外国語学部の小論文では、「グローバル化への対応」「異文化間の交流促進」「多文化主義の理解」「国際社会の現状」といったテーマが継続して重要視されています。
注目の新テーマには、「多文化共生の重要性」「環太平洋パートナーシップ協定（TPP11）」「経済連携協定（EPA）」「難民問題への取り組み」が含まれます。
過去5年間のテーマ分析
国際関係と外国語学部では、これまで「国際交流の推進」「異文化理解の拡充」「多文化主義の推進」「グローバリゼーションへの対応」が頻繁に扱われてきました。
2024年の出題が予測されるテーマ
国際関係と外国語学部では、今後も「グローバリゼーションへの適応」「国際交流の促進」「異文化間の深い理解」「多文化主義への取り組み」「普遍的価値への注目」が続く見込みです。
さらに、「多文化共生の促進」「TPP11の展望」「EPAに関する議論」「難民問題に対する具体的解決策」「訪日外国人旅行者の動向」など、新しい問題が試験に取り入れられることが予想されます。
教員養成系の分野
おさえておくべき基本テーマ
教員養成系学部の試験では「教師の社会的な役割」「いじめ対策」「子供の心理発達」「学力低下問題」「学校生活への適応困難」が注目されています。
注目の新テーマとしては、「デジタル技術を利用した教育手法」「包括的教育の展開」「アクティブラーニングの導入」が挙げられます。
過去5年間のテーマ分析
教員養成系学部の小論文テーマは、主に「教育理論」及び「教育実践」の2つのカテゴリに分類されます。
教育理論においては、「教育の社会的役割」「学校教育における課題」「教師理論」「発達理論」が重要視されています。
2024年の出題が予測されるテーマ
今後の試験では、「教育の現場課題」「いじめ問題への対策」「社会からの引きこもり」「理想的な教師の条件」「学力低下の原因と対策」「学校適応問題」が引き続き取り上げられる見込みです。
また、「スマートフォンとSNSの教育利用」「ICTを活用した教育プログラム」など新しい教育技術の活用も期待されます。
文・教育系の分野
おさえておくべき基本テーマ
文学・教育系では、「文学理論」「言語コミュニケーションスキル」「教育理論」「日本文化研究」などが重要視されています。
新たな焦点として「情報化社会における文化の変化」「高等教育の改革」が挙げられています。
過去5年間のテーマ分析
文学および教育学の分野は大きく分けて、次の2つになります。
- 文学および教育理論に関するもの
- 文化および文明研究
前者は、「文学論」「日本語学」「言語のコミュニケーション手法」「教育理論」が主なテーマです。
一方後者では、「日本文化論」「異文化間の比較」「言語理論」が注目されます。
2024年の出題が予測されるテーマ
文学・教育系統では、従来の「文学理論」「文化理論」「言語理論」「教育理論」などの核心テーマが引き続き出題されることが予想されます。
加えて、「STEAM教育の導入」「大学の制度改革」などの新しいテーマが取り入れられる可能性があります。
工学系の分野
おさえておくべき基本テーマ
工学系の学部では「未来の技術革新」「科学技術の社会的役割」「自然災害への対応策」「地域および都市開発」などが、問題解決に焦点を当てた主要テーマです。
新規テーマとして「ビッグデータ利用の拡大」「人工知能（AI）技術の発展」が挙げられます。
過去5年間のテーマ分析
工学系の学部の小論文では、「機械工学」「建築・土木工学」「化学工学」「電気・電子工学」「情報工学」といった専門分野が主なカテゴリとして設定されています。
上記の各分野から具体的な問題が出題されています。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度の試験では、「科学技術の方向性」「科学者の社会的責任」「災害対応の進化」「人工知能の影響」などが取り上げられる見込みです。
工学系の学部の小論文では、問題提起に留まらず、実際の問題解決に向けたアイデアや解決策の提出が求められることが特徴です。
理学系の分野
おさえておくべき基本テーマ
理学系の小論文では、実験、実習、観察、および理論的分析という多角的な方法が採用されます。
そして主要なテーマは「生物多様性」「バイオテクノロジー」「地震と津波対策」「人工知能（AI）」「ゲノム編集」「再生エネルギー技術」などが挙げられます。
過去5年間のテーマ分析
理学部の小論文の試験は物理、化学、生物、地球科学の各分野に分かれています。
各分野ごとに実験、観察、理論の観点から問題が出される傾向にあります。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度も「現代科学の挑戦」「科学の日常への応用」といったテーマの出題が引き続き予想されます。
新しい焦点として、「人工知能（AI）の展開」「ゲノム編集の進展」などが注目されるでしょう。
農・水畜産・獣医系の分野
おさえておくべき基本テーマ
農・水畜産・獣医系の学部では「生物多様性保全」「食品安全性の確保」「自給率の向上」「環境保護政策」「バイオエタノール使用」「気候変動への対応」「持続可能性の追求」といったトピックが、小論文の中心テーマとして取り上げられています。
過去5年間のテーマ分析
農業、水産業、獣医学の小論文では、食料生産技術、環境保全方法、バイオテクノロジー応用が頻繁に問われるテーマでした。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度も「日本農業の現状と将来展望」「グローバルな食料安全問題」「環境保全の推進」「バイオエタノールの活用」が重要なテーマとして扱われることが予想されます。
新しいテーマとしては、「持続可能な社会の形成」「食品ロスの削減」が注目されるでしょう。
医・歯・薬系の分野
おさえておくべき基本テーマ
医・歯・薬系の学部では、「新型コロナウイルス対策」「ワクチンの効果と普及」「臓器移植における倫理的問題」「医療の倫理観」「iPS細胞の利用」「再生医療の発展」「地域医療の充実」「健康寿命の延伸」などが、重視されるテーマです。
過去5年間のテーマ分析
医療系、歯科系、薬学系の小論文では、最新の医学課題、医学技術の進歩、生命倫理、健康の維持、医療の倫理、医師の社会的役割などが継続して問題とされています。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度も「先端医療技術の可能性」「医療倫理の探求」「健康管理の新しいアプローチ」「医師の理想的姿」「再生医療の最前線」が引き続き注目されるでしょう。
加えて、「新たな感染症対策」「ワクチン技術の進化」「臓器移植に関する倫理問題」「iPS細胞の研究進展」「地方での医療資源の問題」「医師の需給不均衡」「高齢者向け医療の最適化」が新たな焦点となるでしょう。
医療・看護系の分野
おさえておくべき基本テーマ
医療・看護系の学部では「臓器移植の倫理問題」「高齢者ケアの課題」「医療職間のコミュニケーション」「患者と看護スタッフとのインタラクション」などが医療現場の主要なテーマとして頻繁に取り上げられます。
新しい重要なテーマとして、「感染症対策」「医療・介護分野でのAIの活用」「チームベースの医療提供」が加わっています。
過去5年間のテーマ分析
医療学部と看護学部では、医療および看護の分野がそれぞれ独自の問題を持ちながら、医療現場での臨床技術や人間関係の構築が共通の焦点となっています。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度には、医療および看護の臨床実践に関連するテーマが中心になりそうです。
特に、「医療現場でのコミュニケーション能力の向上」と「AI技術を利用した医療・介護の最適化」が重要視される傾向にあります。
総合・情報・環境・人間系の分野
おさえておくべき基本テーマ
総合・情報・環境・人間系の学部では、「災害への備え」「都市と地方間の問題」「情報社会の展開」「個人情報保護」「人間関係の動向」「スマートフォンとSNSの社会への影響」「地球温暖化対策」「未来のエネルギー資源」「環境保護」など、多岐にわたる学際的なテーマが試験で扱われています。
過去5年間のテーマ分析
総合学部、情報学部、環境学部、人文学部など、異なる分野が交錯する学部群では、学問の枠組みを超えた広い視野からの問題提起が行われています。
これらの学部は学際的な教育アプローチを特徴としています。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度は、広範な社会課題を取り扱い、多角的な視点からの問題解決が求められるでしょう。
特定の専門分野に留まらない一般教養が問われる傾向にあると予測されます。
家政・生活科学系の分野
おさえておくべき基本テーマ
家政・生活科学系の学部では「生活環境の質向上」「食育に関する教育」「ファストフードの影響」「食品の安全性」「食品廃棄の問題」「リサイクル推進」「メタボリックシンドロームの予防」など、日々の生活に密接に関連する広範囲なテーマが扱われます。
過去5年間のテーマ分析
家政学や生活科学系統では、「衣・食・住」を中心に、生活環境改善、女性の職場進出、性別による役割分担の見直し、リサイクル活動など、様々な観点からの問題提起がなされています。
2024年の出題が予測されるテーマ
2024年度も「環境保全」「食品安全」「消費者の意識と行動」など、生活科学の全域にわたるテーマが継続して問われると予想されます。
さらに、「性別に関する社会的役割の再評価」「食育の強化」「食品の廃棄削減」など、注目されるべき新たなテーマが焦点となるでしょう。
芸術・体育系の分野
おさえておくべき基本テーマ
芸術学部では実技評価と芸術鑑賞の能力が主要な出題テーマです。
一方、体育学部では「オリンピックとパラリンピック」「子どもの体力問題」「健康と肥満」「ドーピング問題」などが取り上げられます。
過去5年間のテーマ分析
芸術学部は音楽と美術に特化し、実技と芸術理論の両方が試験対象となっています。
体育学部では、スポーツの社会的な役割や実際のスポーツ実践に関する内容が頻繁に問われます。
2024年の出題が予測されるテーマ
芸術学部では、技術的能力と芸術的鑑賞力に関する問題が続くと予想されます。
体育学部では、オリンピックの社会的影響、ドーピング対策、公衆衛生における肥満問題が重要なテーマとして注目される見込みです。
