「高専って高校なの?大学なの?」
「中学校を卒業して入るのに、なぜ高等教育機関なの?」
「高専を卒業すると大卒になる?」
高等専門学校、いわゆる「高専」は名前だけでは仕組みが分かりにくい学校です。
結論からいうと、高専は中学校卒業後に入学し、原則5年間の一貫教育で専門分野を学ぶ高等教育機関です。
普通高校のように3年間通って大学受験をする学校でも、一般的な4年制大学でもありません。
文部科学省によると、高専は実践的・創造的な技術者を育成することを目的とした5年一貫の高等教育機関で、現在は国公私立合わせて全国に58校あります。
さらに、高専卒業後は就職だけでなく、大学への編入や高専専攻科への進学という道もあります。
まずは、高校や大学と何が違うのかから整理していきましょう。
高専とは?中学卒業後から5年間学ぶ高等教育機関
高専の正式名称は「高等専門学校」です。
中学校を卒業したあとに入学し、原則として5年間学びます。商船に関する学科は5年6か月です。
普通高校へ進学した場合は、
中学校
↓
高校3年間
↓
大学4年間
という進路が一般的です。
一方、高専では、
中学校
↓
高専本科5年間
↓
就職・大学編入・高専専攻科など
という進み方になります。
つまり、高校3年間と大学前半部分を単純につなげた学校ではありません。
15歳前後という比較的早い段階から、一般科目と専門科目を組み合わせながら5年間一貫して学ぶ独自の学校制度です。
文部科学省も、高専を「高等教育機関」と位置づけています。
「中学生が受験するから高校の一種」と考えると、高専の仕組みが分かりにくくなるので注意しましょう。
まず比較|高専・普通高校・大学の違い
高専を初めて調べる場合は、細かい制度より先に「普通高校や大学と何が違うのか」を比較すると分かりやすくなります。
| 比較項目 | 高専 | 普通高校 | 4年制大学 |
|---|---|---|---|
| 主な入学時期 | 中学校卒業後 | 中学校卒業後 | 高校卒業後 |
| 基本の修業年限 | 5年 | 3年 | 4年 |
| 学校の位置づけ | 高等教育機関 | 後期中等教育機関 | 高等教育機関 |
| 学ぶ内容 | 一般科目+専門科目 | 幅広い普通教育が中心 | 専門分野を中心に学ぶ |
| 専門教育が始まる時期 | 早い | 高校卒業後に大学で本格化する場合が多い | 入学後 |
| 実験・実習 | 多い | 学校・学科による | 学部・学科による |
| 卒業時 | 準学士の称号 | 高校卒業資格 | 学士の学位 |
| 主な卒業後の進路 | 就職・大学編入・専攻科 | 大学・専門学校・就職など | 就職・大学院など |
| 進路を大きく決める時期 | 中学生の段階 | 高校在学中にも考えられる | 高校卒業時までに学部等を選ぶ |
この表を見ると、高専は「高校と似た入口を持つ一方で、教育機関としては大学と同じ高等教育に位置づけられている」という特徴があります。
特に保護者が確認しておきたいのは、中学生の段階で専門分野に近い進路を選ぶことになる点です。
普通高校へ進学した場合は、高校3年間の中で文系・理系や大学の学部を考える時間があります。
高専では、入学時から機械・電気・情報など、ある程度専門分野を意識して学校・学科を選ぶことになります。
「就職に強そうだから」という理由だけではなく、本人がその分野を学び続けられそうかまで見ておくことが大切です。
高専と高校・大学・大学校は何が違う?
高専は、高校とも大学とも完全に同じではありません。
さらに「大学校」という名称の教育機関もあるため、それぞれの違いを整理しておきましょう。
高専と高校の違い
大きな違いは、教育の位置づけと修業年限です。
普通高校は原則3年間ですが、高専本科は原則5年間です。
また、高専では早い段階から専門教育が始まり、一般科目と専門科目を5年間にわたって学んでいきます。
特に理論だけではなく、実験・実習・実技を重視する点が特徴です。
イメージとしては、
普通高校:高校段階では幅広い教科を学び、大学進学後に専門分野を本格的に学ぶ
高専:中学卒業後から一般科目と並行して専門分野を継続的に学ぶ
という違いがあります。
そのため、中学卒業時点で「工学や情報などを専門的に学びたい」という方向性が比較的はっきりしている生徒にとっては、高専が進路の候補になります。
高専と大学の違い
大学は原則として高校卒業者などを対象とし、修業年限は基本的に4年間です。
高専は中学校卒業後から入学でき、原則5年間の一貫教育を行います。
そして特に注意したいのが、卒業時の扱いです。
高専本科を卒業しただけでは、4年制大学を卒業した場合と同じ「学士」になるわけではありません。
高専本科の卒業者には「準学士」の称号が与えられます。
ただし、高専卒業後に大学へ編入したり、高専専攻科へ進んだりする進学ルートがあります。
「高専か大学か」の二者択一ではなく、高専から大学へ進むこともできると理解しておきましょう。
高専と大学校の違い
「高専」と「大学校」も名前が似ていますが、同じ学校制度ではありません。
高専は、学校教育法に基づく高等教育機関です。
一方、「大学校」という名称を使う教育機関はさまざまで、学校教育法上の「大学」とは限りません。
たとえば、特定の職業人を育成するために国などが設置している大学校もあります。
そのため、
高専=学校制度上の高等専門学校
であるのに対し、
大学校=名称だけでは学校の位置づけを判断できない
という違いがあります。
大学校については、以下の記事で詳しく整理しています。
大学校とは?大学や専門学校との違い。学費・学歴・給与がもらえる?も解説
高専では何を学ぶ?
高専の大きな特徴は、中学校卒業後の早い段階から専門教育が始まることです。
ただし、専門科目だけを5年間勉強するわけではありません。
一般科目と専門科目を組み合わせながら学びます。
理工系を中心とした専門分野を学ぶ
高専では、工学系を中心とした専門教育が行われています。
学校によって学科名や教育内容は異なりますが、代表的な分野としては、
- 機械
- 電気・電子
- 情報
- 化学・材料
- 建築・土木
- 商船
などがあります。
近年は複数分野を横断する学科やコースを設ける高専もあるため、「高専ならどこでも同じ内容を学ぶ」というわけではありません。
志望する場合は、それぞれの高専・学科で実際に何を学べるのかを確認することが重要です。
実験・実習を重視して学ぶ
高専教育では、理論を学ぶだけでなく、実験や実習が重視されています。
5年間の後半では、より専門的な内容を学び、卒業研究にも取り組みます。
そのため、
「大学へ入ってから専門を決めたい」
という進路とはかなり違います。
反対に、
「機械を作ることに興味がある」
「プログラミングや情報分野を深く学びたい」
「実験やものづくりが好き」
など、興味のある方向が早い段階から見えている場合には、高専の教育内容を具体的に調べてみる価値があります。
高専を卒業したあとの進路はどうなる?
「高専=卒業したら就職」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、実際には就職だけでなく進学ルートもあります。
高専卒で企業へ就職する
高専卒業後、そのまま企業へ就職する進路があります。
特に技術系人材として企業からの需要が高いことは、高専の大きな特徴の一つです。
国立高専では、就職希望者の就職率が非常に高い水準で推移しています。
また、高専卒の求人倍率が高いこともたびたび注目されています。
ただし、求人倍率が高い=希望する企業へ必ず就職できるという意味ではありません。
業界、職種、学校、専攻、本人の希望などによって就職先は変わります。
就職の数字だけを見て高専を選ぶのではなく、実際にどのような企業・職種への就職実績があるのかまで確認したほうがよいでしょう。
大学へ編入する
高専本科を卒業したあと、大学へ編入する道もあります。
つまり、
高専
↓
大学へ編入
↓
大学卒業
という進路を選ぶこともできます。
「高専へ進んだら大学へ行けなくなる」というわけではありません。
むしろ、高専で専門分野を学んだあとに、さらに大学で学ぶという選択肢があります。
ただし、編入できる大学・学部・学年や入試方法は大学によって異なります。
「高専からなら必ず大学3年次に編入できる」と一律には考えず、志望大学の募集要項を確認する必要があります。
高専の専攻科へ進学する
高専本科5年間のあとには、さらに2年間学ぶ「専攻科」という進路もあります。
本科5年
↓
専攻科2年
という形です。
専攻科でさらに高度な専門教育を受け、一定の要件を満たしたうえで所定の手続きを行うことで、学士の学位取得を目指せる仕組みがあります。
その後、大学院への進学を目指すこともできます。
高専卒は大卒になる?
ここは高専を調べ始めた保護者や中学生が特に迷いやすいところです。
結論からいうと、高専本科5年間を卒業しただけで「大卒」になるわけではありません。
高専本科の卒業者に与えられるのは「準学士」という称号です。
大学を卒業した場合に取得する「学士」とは異なります。
ただし、高専卒業後には、
- 大学へ編入して卒業する
- 高専専攻科へ進み、所定の手続きを経て学士取得を目指す
といったルートがあります。
したがって、
高専卒=大卒
でも、
高専へ行くと学士を取得できない
でもありません。
「最終的にどこまで進学したいのか」まで含めて進路を考えることが大切です。
高専を進路候補にするとき確認したいポイント
高専は就職実績だけを見て選ぶ学校ではありません。
中学卒業後から5年間専門教育を受けるため、普通高校とは学校生活や進路の考え方がかなり異なります。
早い段階から専門分野を選べそうか
普通高校では、高校生活を送りながら文系・理系や大学の学部を考えることができます。
高専の場合は、中学生の段階で学校や学科を選びます。
そのため、
「理系だから高専」
だけではなく、
「その高専で学ぶ分野に興味を持てそうか」
まで確認したいところです。
特に学校によって学科・コースの内容は異なるため、学校説明会やオープンキャンパスなどで実際の授業や研究内容を確認するとよいでしょう。
5年間その分野を学び続けられそうか
高専は早い段階から専門性を高められる一方、選んだ分野との相性は重要です。
たとえば「パソコンが好き」という理由だけで情報系を選んでも、実際の授業では数学やプログラミング、専門科目を継続的に学ぶことになります。
「ものづくりが好き」だけでなく、
- 数学や理科を学ぶことに抵抗がないか
- 実験・実習が好きか
- 専門的な内容を深く学びたいか
- 興味のある学科の授業内容を理解しているか
といった点まで確認しておきたいところです。
就職と進学の両方を確認しておく
高専は就職に強いことで知られていますが、卒業後に進学する学生もいます。
そのため、高専を検討するときは、
- 卒業後すぐに就職したいのか
- 大学編入も考えているのか
- 専攻科へ進みたいのか
まで含めて考えると、進路のイメージがしやすくなります。
「就職するつもりで入学したけれど、途中で大学へ進みたくなった」という可能性もあります。
志望する高専の編入実績や専攻科への進学状況まで確認しておくと、将来の選択肢を把握しやすくなります。
高専が向いていそうな人・普通高校も比較したい人
高専と普通高校のどちらがよいかは、偏差値や就職率だけでは決められません。
本人の興味や、いつ専門分野を決めたいかによっても変わります。
| こんなタイプ | 高専を検討しやすい | 普通高校も比較したい |
|---|---|---|
| 工学・情報・ものづくりへの興味 | かなりある | まだ分からない |
| 専門分野を学び始める時期 | 早く始めたい | 高校生活の中で考えたい |
| 実験・実習 | 好き・興味がある | まだ判断できない |
| 大学進学 | 編入なども含めて考えられる | 一般入試で幅広く大学を選びたい |
| 将来の分野 | ある程度見えている | 文系・理系も含めてまだ迷っている |
| 学び方 | 専門性を深めたい | 幅広い科目を学びながら決めたい |
この表は「どちらが優れているか」を判断するものではありません。
中学3年生の時点で進みたい専門分野が見えている人と、まださまざまな可能性を残しておきたい人では、合う進路が違います。
「偏差値が高い」「就職が強い」だけで高専を決めない
高専は、一般的な普通高校とは教育内容も進路も異なります。
そのため、
「偏差値が高いから」
「有名企業へ就職できそうだから」
「求人倍率が高いから」
という理由だけで決めると、入学後にイメージとの違いを感じる可能性があります。
特に確認しておきたいのは、
- どんな専門分野を学ぶのか
- 数学や理科をどのように学ぶのか
- 実験・実習がどの程度あるのか
- 5年間学び続けたい内容なのか
- 卒業後にどんな就職先・進学先があるのか
といった部分です。
高校や大学を偏差値だけで選ぶことについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
高校生の進路で取り返しがつかない判断ランキング|偏差値信仰が招く末路を塾講師が語る
高専・高校・大学の違いを理解してから進路を考えよう
高専は、単純に「高校の代わりに行く5年制の学校」ではありません。
中学校卒業後から5年間一貫して専門教育を行う高等教育機関です。
ポイントを整理すると、
- 中学校卒業後に入学する
- 本科は原則5年間
- 早い段階から専門分野を学ぶ
- 実験・実習を重視している
- 本科卒業時は準学士
- 卒業後は就職だけでなく大学編入もできる
- 高専専攻科へ進むルートもある
という特徴があります。
普通高校から大学へ進むルートとは仕組みがかなり違うため、どちらが上・下という比較ではなく、本人がいつから何を専門的に学びたいのかで考えることが重要です。
中学生の段階で専門分野への興味がはっきりしているなら、高専は有力な選択肢になります。
一方、まだ文系・理系も含めて進路を決めきれていないなら、普通高校から大学を目指すルートとも比較して考えたほうがよいでしょう。
また、「大学」と「大学校」も制度上は同じものではありません。
高専から先の進路まで考えるなら、学校名や偏差値だけで判断せず、それぞれの教育機関の位置づけと卒業後の進路まで確認しておきましょう。
